【プロフィール】
名前 : 鈴木 綜真
所属 : 株式会社Spatial Pleasure
URL : https://spatial-pleasure.xyz/
経歴 : 京都大学物理工学科を卒業後、MITメディアラボにてブロックチェーンで音楽の著作権を管理するプラットフォームの開発に参加。その後、ロンドン大学UCL Bartlett School修士課程で都市空間解析学を学び、2019年5月にSpatial Pleasure(旧Placy)を創業。Wired Japanにて「Cultivating The CityOS」を連載。
【事業】
ビジネスをする原点はなんですか?
ロンドンで都市空間を研究している時から実務として挑戦したいという想いは明確にあったけれども、それをやっている企業がなかった。なので、自分で挑戦しよう、となったのがビジネスの原点です。
事業内容を教えて下さい
交通領域に特化した都市シミュレーションサービスの開発を行っています。解決する課題は、主に交通の渋滞。現在、交通渋滞における経済損失は世界中で約150兆円と試算されています。このような経済損失を、交通シミュレーションを活用して解決しようとしております。
実は、交通分析は年々難しくなって来ております。シェアサイクルや電動キックボード等、従来になかった交通の手段が増えているからです。また、将来的に自動運転や、ドローンなどの3次元に動く手段が増えるに従い、さらに交通の分析が難しくなります。なので、それらをデータを用いて可視化することで、今後の都市計画に活用出来るようにしたいと考えています。
将来的には、3次元で人やドローンが動くことを含めたシミュレーションを行い、会社のミッションである「Model the real world(物理空間のモデル化)」を実現していきたい。
具体的には、エリアの中の交通状況や渋滞状況を分析して、料金を自動課金するダイナミックロードプライシングの実現です。すでにシンガポールなどの一部の国では開始されている仕組みで、交通量やCO2排出量を調整する先進的な取組の一つ。今後、世界中で使われる仕組みと考えています。背景にあるのは、自動運転の実装により自家用車がマクロで最適化されることと、税収の問題。従来、自動車の運転に伴い課税されていたのは、ガソリン税や自動車税でしたが、今後、ガソリン車の減少と、自動車保有率の減少から新しい税金の仕組みが必要になる。そこで注目されているのが走行量に応じた課金システムです。
今、行っている混雑分析から将来的にはこういった構想まで実現出来るようにしていきたいと考えています。
顧客にしているプレイヤーは?
顧客は大きく3つのカテゴリーに分類出来ると思っています。一つ目のカテゴリーは、行政。次に行政に対して計画を作成している建設コンサルや都市計画事業者。そして、交通事業者の方々です。この中でも、まずは都市計画事業者や、交通事業者の方々が初期のクライアントと考えています。
競争力のある独自アセットの構築
競合が沢山あるような業界ではないのですが、他社との差別要因は、多分、愛嬌ですね(笑)。
実際はアルゴリズムで、具体的にはモニタリング(どのような交通が街で発生しているかの現状把握)と、シュミレーション(道幅を変える、通行止めにすると何が起きるかの仮説構築)だと考えています。
弊社は、特に後者の精度が他の事業者よりも独自性が強い部分です。シミュレーションは行えば行う程、自社にデータが貯まるため、より独自性を強化出来る部分だと思っています。
10年前に道で声を掛けた人が会社のCTO
仲間集めはナンパに近いんです。実は、今会社のCTOを担ってくれている方は、10年前にオーストラリアの道ですれ違ったことがきっかけで友人になった人です。
当時、彼は歩きながらブラックベリー(携帯電話)でコードを書いていて、強く興味を惹かれたことを覚えております。彼のように自分達の想いに共感してくれる人を中心にチームを構築してきたけれど、今後はより体制を整えて事業の拡大に応じた採用活動をしていきたいと考えています。
NSSは、審査員からの指摘や、初期検証の費用負担が魅力的なプログラム
NSSについては、FBで広告が流れて来て知りました。すでに募集締切が直前だったので、すぐに申し込みを行い、次の週にはプレゼンを行いました。実際にNSSを受けてみてからは、具体的にどうやってマネタイズするのか、提供価値、決裁の流れ等、自分達が絞り切れていなかった点の指摘を受けることも多く、事業のブラッシュアップに繋がっております。
また、NSSでは、ピッチの機会(事業者との繋がりの機会)をもらえることや、初期検証の費用を頂けることが大きな価値だと思っています。
今後の展望
世界全体を記述する、というのが根底にあります。僕のバックグランドの物理では、方程式で世界を記述する、ということをするんですね。昔は凄くシンプルな世界だった。それが、今は都市文明。記述するのが複雑で凄く難しい。一方で、それを説明する素材は揃って来ている。人の動きのGPSや、上から見た衛星データ、IoT技術等。それらを活用して、より精度の高い世界記述する、これが今、一番やりたいことです。
随所に冗談を交えながら、快くインタビューに回答して下さった鈴木さんは、非常に魅力溢れる起業家のお一人です。今後、事業を拡大するに伴って採用活動に力を入れるタイミングとのことです。ご興味ある方は是非ご連絡をお待ちしております!